まずは法人化による税金面でのメリットを大きく分けたものをおさらい。
- 消費税が2年間免税になる
- 自分や家族への給料を経費にできる
- 色々な節税対策が使える
今回は「色々な節税対策が使える」について書いていきます。
目次
社宅による節税
社長個人が住宅ローンを利用して住宅を購入すれば、個人の税金が安くなります。いわゆる住宅ローン控除ですね。でも賃貸物件であれば、毎月の家賃の支払は個人の税金から差し引くことはできません。また、個人が契約している以上、会社の経費に入れることはできません。
しかし、法人契約にして、会社が個人に社宅として貸しているということであれば、家賃の一部を会社の経費にすることができます。つまり個人の税金は変わらないのですが、会社の税金が安くなるということです。
「一部を会社の経費に」というのは、「だいたい家賃の50%くらいは個人が負担すべきでしょ」という決まりがあるからです。
具体的には、会社の口座から管理会社等へ家賃を直接支払い、会社は個人から家賃の50%くらいを徴収することになります。
会社が家賃10万円の家を社宅として貸した場合
(家賃月額10万円-個人負担分5万円)×12か月×法人の実効税率23%=138,000円
家賃10万円の場合だと、会社の税金が13万円ほど安くなるイメージです。
ちなみに「50%くらい」というのは、きちんと計算すればもう少し下げることもできます。少し難しい計算ですが。個人負担分が下げられれば、もう少し会社の節税額は大きくなります。
個人事業の場合
「うちは自宅の家賃も経費に入れてるよ」という個人事業主の方もたくさんいらっしゃいます。しかしそれはあくまでも自宅の一部を仕事場としている場合です。法人の場合は社宅として、つまり自宅で仕事を一切していなくても経費に入れられるという点で大きな違いがあります。
出張手当による節税
まず知っておいて頂きたいのが、「手当にも基本的に税金はかかる」ということです。残業手当、職務手当、住宅手当、家族手当、役職手当など、いろいろな名前がありますが、個人の収入が増えるものに対しては個人の側で税金がかかります。住宅手当として5万円支給すれば会社側で経費になりますが、個人の側で5万円に対して所得税がかかってきます。
ただし、個人の側で税金がかからないものの代表例として通勤手当のほかに、出張手当があります。
出張手当とは?実費精算との違い
出張に行って追加で発生する支払はこんな感じでしょうか。
- 航空券、電車代、タクシー代などの交通費
- ホテル代などの宿泊費
- 取引先との接待費用
これらはだいたい領収書を会社に渡して精算するのが一般的だと思います。交通費や宿泊代などはそもそも会社が準備して支払もしてくれていることが多いかもしれません。
これらは税金の計算上どうなるかというと
交通費20,000円、宿泊費10,000円、接待費用20,000円とした場合
会社:領収書をもとに50,000円を経費に入れる
個人:精算時にお金をもらうけど実費精算なのでもらったお金は収入としてカウントしない→税金の計算には入れなくていい
出張手当とはこれと別に日当を渡すということです。
交通費20,000円、宿泊費10,000円、接待費用20,000円、出張手当10,000円とした場合
会社:領収書をもとに50,000円を経費に入れる+手当として支払った10,000円を経費に入れる
個人:出張手当10,000円は収入としてカウントしない→税金の計算には入れなくていい
通常、残業手当や住宅手当など、手当をもらったら個人はその分が収入としてカウントされ、税金が高くなりますが、出張手当については税金の計算に入れなくていいということになっています。
月に何度も出張があるような会社は年間で考えると結構大きな金額になります。
個人事業の場合
個人事業の場合、自分に給料を出すことはできないので、自分の出張に対して手当を支給するということはできません。もちろん交通費や宿泊代など実費精算部分は領収書から経費に入れられますが、それに加えて手当を支給し、それを経費に入れられる点で、法人の方が節税の幅は広がります。
保険による節税効果が大きくなる
個人事業の場合、保険料の支払は経費ではなく所得控除という枠組みで計算されます。
所得控除の対象になるのは生命保険だけですが、生命保険料の控除は年間12万円が限度となっています。ちなみに12万円税金が安くなるわけではありません。
税金の計算は
(所得-所得控除)×税率=税額
となるので、最大でも「12万円×税率」だけしか税金は安くなりません。
所得が低い人だと所得税と住民税で税率15%なので、実際に税金がいくら安くなるかというと12万円×15%=1万8千円。
所得がめちゃくちゃ高い人だと所得税と住民税で55%なので、6万6千円ですが、55%の税率の人はそうそういないでしょう。
個人事業の場合、保険については節税というより、事業保障(万が一のときの備え)という面が強いです。
法人の場合は保険料を経費に入れることができる
個人事業の場合は、生命保険の支払は経費に入れることはできませんが、法人の場合は、一定のルールに従って経費に入れることができます。
大きな保障に入れば当然保険料も高くなるので、それだけ経費に入れられる金額も大きくなる、つまり法人税が安くなるということです。
保険については色々種類があり、経費に入れられる割合も変わってくるのですが、それはまた別の機会に書くとして、例えば年間の保険料が100万円で全額が経費に入れられる保険の場合
保険料100万円×法人の実効税率23%=23万円
23万円税金が安くなります。大きいですよね。掛け捨てだと、保険期間中に万が一のことがなければ戻ってくるお金は無いですが、解約返戻金といって、一定の金額が戻ってくるような保険商品であれば、「毎月の保険料を積み立てながら、節税にもなる」という使い方ができます。
決算期を自由に決められる
個人事業主の場合、1月1日~12月31日で区切って、3月15日に確定申告をするという決まりです。変更することはできません。
年末が近づき、忙しくなってきたところで、今年の利益がやっと見えてくる。
「あれ?めちゃくちゃ利益出てるやん!でも12月31日まであと2週間しかない!」
「事前節税事後脱税」という言葉がありますが、何か対策をするとしたら12月31日までにしなければなりません。年末で忙しいなか、じっくり対策というのは難しいですよね。
一方法人は、決算期を自分で決められるので、繁忙期を避けて決算・申告を行うことができます。例えば年末年始が繁忙期であれば、夏ごろに決算期を設定すれば、繁忙期を過ぎているので、利益の予測も立てやすいですし、節税対策にも時間をかけて取り組むことができます。
いろいろと法人だけができる節税対策をご紹介しましたが注意点もたくさんあります
色々な節税対策をご紹介しましたが、それぞれ注意点があります。
例えば出張手当であれば
- 出張旅費規程を作る
- 出張報告書を残しておく
- 全社員を対象にする
そういった注意点を抑えておかないと、税務調査があった場合に否認されるリスクがあります。「否認される」とは、経費として認められず、追加の税金がかかるということです。ペナルティとして余計に税金がかかる場合もあります。
保険による節税の場合も、解約時に解約返戻金を受け取ると、それは収入として計算しなければならないため、大きく税金が発生することもあります。事業の見通しを立てながら加入しないと節税効果が得られないということもありあます。
ご自身のビジョンと照らし合わせて検討されてください
最初の話に戻りますが、法人化によって税金面でメリットがある場合とはある程度の利益が出ている場合です。
ただ、法人化することによって社会的信用も増しますし、ひとつ上のステップへ行ける可能性が広がります。現時点で税金面でのメリットが得られるほど利益が出ていなくても、もっと大きなことにチャレンジしたい、事業を大きくしたいという考えであれば、一度シミュレーションをしてみてご自身のビジョンと照らし合わせてみるといいかもしれません。