今回は個人事業主の青色申告について書いていきます。
一度確定申告を経験された方は確定申告がどんなものかイメージがつくと思いますが、開業されたばかりの方は「なんとなく青色申告の届出を出したけどよくわかってない」という方も多いのではないでしょうか?
目次
青色申告に対する一般的なイメージ
- なんとなく節税になりそう
- ちゃんとしないといけなくなる
- 税務調査が入る可能性が高くなる
- なんとなく手間がかかりそう
- 会計ソフトが必要になる
という感じでしょうか?
なんとなく節税になりそう
節税になります。
利益が出ていれば「青色申告特別控除」という控除(お金が出ていかない経費のようなもの)が使えるので税金や国保が安くなります。
逆に赤字であれば、その赤字を翌年の利益から控除することができるので節税になります。
(ずっと赤字・・・という場合は、そもそも税金をほとんど払っていないのであまり節税にはなりません。個人事業の場合は「ずっと赤字」ということはあまり無いでしょうけど。)
ちゃんとしないといけなくなる
白色にせよ青色にせよ、ちゃんとしないといけません笑
「今年の売上はこれくらーい、交際費はこれくらーい、利益はこれくらーい」
・・・という感じで確定申告をする人はいないと思います。
ちゃんと領収書をとっておいて、それを集計して利益を計算するというのは、青色申告でも白色申告でも同じです。
税務調査が入る可能性が高くなる
少し古いデータですが、弥生会計のホームページによると
青色申告の方の15%、白色申告の方の7%が「税務調査を受けたことがある」と回答しているようです。
青色申告の方が事業規模が大きい人の割合が多かったり、色々な節税をしている人の割合が多いので、統計的にそういう結果になるのは仕方がないでしょうね。
ちなみに国税庁の発表によると個人への実調率(実地調査の件数÷税額のある申告を行った納税者数)は1%台です。
なんとなく手間がかかりそう
あとで詳しく書きますが、青色申告には2種類あります。
65万円控除と10万円控除です。
65万円控除は白色申告より手間がかかりますが節税効果も大きくなります。
10万円控除は白色申告とほとんど同じ手間です。
・・・てことは、白色申告のメリットはほぼありません。
白色申告の方は少なくとも青色申告の10万円控除を選択しましょう。
会計ソフトが必要になる
これも青色申告の65万円控除にするか、10万円控除にするかで変わります。
65万円控除は会計ソフトがないと厳しいです。
10万円控除はExcelや手書きでもがんばればできますが、時間効率を考えると会計ソフトを使えるようにしておいた方がいいでしょう。
確定申告に何日もかけるくらいなら、売上を上げるほうに時間を使うか、休息に時間を使うべきです。
青色申告65万円控除と10万円控除の節税額の差
「青色申告には65万円控除と10万円控除の2種類あって、65万円控除のほうが手間がかかる」ということはなんとなくイメージできましたでしょうか?
では、それぞれ一体どれくらい節税になるのか?
個人事業主の場合、納めないといけない税金は主に所得税と住民税です。
(それ以外に消費税や事業税もありますが、ここでは関係ないので省略します)
住民税は一律10%ですが、所得税は最低5%~所得によって段階的に高くなります。
つまり、最低でも利益に対して15%(所得税5%+住民税10%)の税金がかかります。
65万円控除の場合
65万円×15%=97,500円
最低税率でも97,500円の節税になり、さらに国保も安くなります。
手間はかかるけど、国保を含めて年間10万円以上の節税になるのでこちらがおすすめです。
10万円控除の場合
10万円×15%=15,000円
最低税率で15,000円の節税になり、さらに国保も安くなります。
大したことないようにも思えますが、白色申告とほとんど変わらない手間で節税できるなら青色申告にした方がお得です。
確定申告で提出する書類
青色申告65万円控除と10万円控除では、「確定申告の手間が違う」と書いてきましたが、それは提出する書類が違うからです。
その違いについては後で説明するとして、ここでは確定申告で提出書類について簡単に見ていくことにします。
確定申告で提出する書類は大きく分けて、次の2種類です。
- 確定申告書
- 白色:収支内訳書、青色:青色申告決算書
確定申告書
事業が赤字だったり、株をやっていたり、不動産の売買があったりすると提出する書類が増えますが、基本的には次のような書類が必要になります。
パッと見ても何が書いてあるのかよく分からないかもしれませんが、確定申告書のメインの情報は、「売上がいくらで経費がいくらで」という事業についての詳細な情報というよりも
- 扶養家族が何人いるか
- 社会保険(国保や年金)をいくら払っているか
- 事業以外に収入はあるか
- 住宅ローン控除を受けているかどうか
- 医療費控除を受けるのかどうか
- ふるさと納税による控除を受けるのかどうか
など、事業とは切り離した個人についての情報がメインになります。
(もちろん事業所得xxx円という、「最終的に事業でいくら儲かったか」という情報は載ります)
白色:収支内訳書、青色:青色申告決算書
事業についての詳細な情報は、確定申告書と別に白色申告なら収支内訳書、青色申告なら青色申告決算書で報告をすることになります。
白色:収支内訳書
青色:青色申告決算書
確定申告書は事業についての情報というより、個人についての情報がメインですが、収支内訳書or青色申告決算書で事業についての情報を詳しく報告します。
収支内訳書も青色申告書も、1ページ目で「売上や経費がいくらで、利益がいくらで」という情報を記載し、2ページ目以降でそれをもう少し詳しく書いていくイメージです。
青色申告65万円控除と10万円控除の提出書類の違い
青色申告65万円控除と10万円控除の提出書類の違いは、4ページ目の貸借対照表を作る必要があるかどうかです。
65万円控除を受ける場合は貸借対照表を作る必要がありますが、10万円控除を受ける場合は作る必要はありません。
この「貸借対照表を正しく作る」というのが会計ソフト無しでは非常に難しいです。
貸借対照表を正しく作るためには?
貸借対照表とは、12月末時点での財産の状況を報告する書類です。
現金の残高が5万円あって、普通預金の残高が100万円あって、売掛金が10万円あって、借入金の残高が200万円あって・・・という感じで。
複式簿記とは
例えば9/20に普通預金口座から10万円の事務所家賃を支払った場合
白色申告や青色申告10万円控除の場合
経費帳の地代家賃のところに「9/20 事務所家賃8月分 10万円」という記録します。つまり・・・「地代家賃が10万円増えた」という記録を残しておけばOKです。
青色申告65万円控除(複式簿記)の場合
「地代家賃が10万円増えた」という記録とともに・・・
「普通預金が10万円減りました」という記録が必要になります。
一つの取引につき2カ所に記録をする必要があるので複式簿記といいます。
65万円控除を受けるためには全ての取引についてこのような複式簿記による記帳を行い、最終的に12月末の普通預金の残高が通帳と一致している必要があります。
売掛金や買掛金、未払金、借入金、事業主貸、事業主借など、すべてにおいてこういう作業が必要になるので、Excelや手書きの集計表で作るのは至難のわざです。
会計ソフトを使うと、こういう一行の仕訳を入力するだけで自動的に地代家賃と普通預金に集計してくれます。
「面倒くさそうなんやけど、結局どうしたらいいと?」と思われた方
通帳の入出金の数、領収書の数だけ仕訳を入力する必要があるので手間はかかります。
会計ソフトを使わず青色申告65万円控除を受けるのは難しいので、現実的には2つの選択になります。
- 会計ソフトを使って自分で確定申告をする
- 65万円控除を受けることで約10万円くらいは節税できるのでお金を払って税理士に依頼する
会計ソフトを使って自分で確定申告をする
事業規模が小さい方やインターネットバンキング、クレジットカードを利用することに問題が無い方はクラウド会計ソフトをおすすめします。
クラウド会計ソフトは、一度ルールを設定してしまえばインターネットバンキングやクレジットカードの情報をネットから取得して自動的に仕訳を作成し、複式簿記で記帳をしてくれます。
ただ、ルールが間違っていればぐちゃぐちゃのデータが出来上がってしまう恐れがあります。
実際に「通帳のデータが二重で登録されており、売上が2倍になっていた」という方もいらっしゃいました。
導入部分だけお手伝いすることもできますので、ぜひご相談ください。
初年度だけきちんとルール作りができていれば、2年目以降は自分でもできると思います。
税理士に依頼する
会計ソフトを使って自分で確定申告をする場合、入力する時間もかかりますし、何より分からないことを調べたり聞いたりする時間と手間がかかります。
多少お金はかかりますが、確定申告のやり方以外にも節税や経営のことなど相談できる相手として税理士に依頼するのも十分にメリットがあります。
開業したての方やインターネットバンキングを使ったり、クレジットカードの使い分けをして頂ければ割引もできますので、ぜひご相談ください。