マネーフォワード社を例に決算書の見方について。

今回は決算書の見方について書いていきたいと思います。

決算書はどこに注目するかによっていろいろな見方ができますが、今回は

  • 売上高
  • 経常利益※
  • お金の増減(=CF=キャッシュフロー)

についてざっくり見ていくことにします。

※経常利益
数年に一度しか発生しないような特別な利益や損失を含めない利益と考えてください。例えば本社建物の売却や子会社株の売却などを除いた利益です。また別の機会に詳しく書きます。

サンプルとして、MFクラウドを運営しているマネーフォワード社を使ってみます。今月マザーズに上場しますし。

売上高と経常利益

ネットで有価証券報告書という投資家向けの情報が開示されているので、そこから業績を拾ってきました。

千円単位なので、直近の2016年11月期の年間の売上は15億円です。
設立して5年で15億円の売上。前年と比べても4億円から15億円と3倍以上になっています。すごいですね。

グラフで見るとこんな感じ

「CMもたくさんやってるし、さすが上場予定の会社だなー!」という感じではないでしょうか?

では利益はどうかというと、さきほどの表にもどってもらって

直近の2016年11月期の経常利益は-8億円。つまり8億円の赤字です。
その前年は11億円の赤字。設立からずっと赤字です。

グラフで見るとこんな感じ

どうでしょう?

マネーフォワードの株買いたいですか?

妻misato
買いたいわけなかろーもん!!だいたい11億円とか8億円とか赤字ば出しとったらもうお金残って無かろうもん!社長もかわいそうたい!

キャッシュフローがどうなっているか

これも有価証券報告書から拾ってきました。

こちらも千円単位なので、右下の2016年11月末時点での現金等の残高は26億円です。
あれだけ赤字でも26億円もお金を持っています。

お金の流れがどうなっているかはこのキャッシュフローを見るとおおまかに分かります。CFはキャッシュフロー、お金の増減という意味です。

営業活動によるCF

商品の仕入や販売、給料や家賃の支払など、通常の営業活動によってどれだけ現金が増減したか示します。
マネーフォワードの場合、物を売る会社ではないので、クラウド会計ソフトの利用料や広告収入などで現金が増加し、社員の給料や家賃の支払、広告費の支払などで現金が減少する感じでしょう。
2016年11月期は7億円のマイナス、2015年11月期は10億円のマイナスですが、広告費やシステム開発なんかの費用が大きかったのではないでしょうか。

投資活動によるCF

設備投資や他社の株への投資、他企業への貸付などによる現金の増減を示します。
設備投資で出て行った資金は基本的には営業活動による収入で回収します。株に投資した場合は、株を買った際に資金が減少し、売った際に資金が増加します。貸付金は貸したときに資金が減少し、返済してもらったときに資金が増加します。
マネーフォワードの場合、2016年11月期は投資活動により資金が5,900万円減少していますが、ほとんどは人員増加による社屋スペースの確保のためのもののようです。

財務活動によるCF

金融機関や社債の発行による借入、新株の発行など資金調達による収入、借入金の返済や株主への配当などによる支出による現金の増減を示します。
マネーフォワードの場合、2016年11月期にこの財務活動によるCFで11億円現金が増加しています。その前年は32億円の増加。内訳をみると借入と新株の発行が半々くらいでした。

2016年11月期についてまとめると

広告費やシステム開発費などで営業活動によるキャッシュフローは7億円のマイナスだったけど、それらの効果が出始める数年以内にプラスになると見込んで、銀行がお金を貸したり、投資家やマネーフォワードに期待する他の企業が株を買って11億円を調達した。差引約4億円のお金が増えて2016年11月の現金残高は約26億円(前年末残高22億円)になった。赤字が続いているけど期待されている企業なので、色々なところから資金調達して現金はたくさんある。
上場してさらに資金調達して知名度を上げてシェア拡大を目指すことにした。
という感じではないでしょうか。

ベンチャー企業の場合、赤字のまま上場するケースは珍しくありません。赤字のままでも株価が何倍にもなることもありますし。

マネーフォワードがシェアを獲得するのかどうかは分かりませんが、マネーフォワードの上場により会計ソフトのクラウド化、バックオフィスの効率化が進んでくれるといいなと期待しています(^^)